あの頃の私へ
台北市民の足は、網の目のように走る路線バス。
数えきれないほど点在するバス停に、
多くの人が降り立ち、
多くの人を乗せ走り去っていく。
屈指の観光地、迪化街近くのバス停にあの子は居た。
学校帰りであろう。少し疲れた様に、安堵した様に、
大きな荷物を持ったまま停留場の椅子に腰掛け、
バスが来る方向をじっと見つめている。
学校は楽しかった?
今日も1日よく頑張ったね。
大丈夫。
大人の世界もそんなに悪くないよ。
いつしか、幼い頃の自分を彼女の姿に重ねていた。
大きな音を立てて1台のバスが通り過ぎる。
そこに彼女の姿はなかった。