深海へ

体長16メートル。
1000メートルを超える深海に潜り、
1時間から1時間半に一度、
新鮮な空気を求めて海面に上がってくるという。

そして「クリック音」と呼ばれる独自の言葉を持ち、
数百キロ離れた場所にいる個体同士で会話をする

マッコウクジラの全てのスケールが規格外で、
僕は船長の解説をぼんやり上の空で聞いていた。

そんな僕が居る海上はどうなっているかというと、
海面に上がってくるマッコウクジラを追いかけて、
10隻を超える観光船が海上を右に左に飛沫をあげる。

2時間後、彼は静かに、大きな背中を海上に見せた。
呼吸をするたびに潮を高く吹き上げている。

たっぷりと酸素を体内に蓄えるや否や、

私たち人間は到底知り得ない、
深い深い世界へと還っていった。


location: 知床、北海道

to the deep sea, 2024

Next
Next

密かな楽園