深海へ
体長16メートル。
1000メートルを超える深海に潜り、
1時間から1時間半に一度、
新鮮な空気を求めて海面に上がってくるという。
そして「クリック音」と呼ばれる独自の言葉を持ち、
数百キロ離れた場所にいる個体同士で会話をする
マッコウクジラの全てのスケールが規格外で、
僕は船長の解説をぼんやり上の空で聞いていた。
そんな僕が居る海上はどうなっているかというと、
海面に上がってくるマッコウクジラを追いかけて、
10隻を超える観光船が海上を右に左に飛沫をあげる。
2時間後、彼は静かに、大きな背中を海上に見せた。
呼吸をするたびに潮を高く吹き上げている。
たっぷりと酸素を体内に蓄えるや否や、
私たち人間は到底知り得ない、
深い深い世界へと還っていった。
location: 知床、北海道